2014年08月17日
北鎌尾根 単独 暴風雨 考察
北鎌尾根に関する個人的な考察の記録。
北鎌尾根へのルート
1日目はこちら
2日目はこちら
個人的な感覚になるが、北鎌尾根の難易度は高い。
今回のルートは 上高地→槍沢→大曲→水俣乗越→北鎌沢出会→北鎌沢右俣→北鎌のコル→槍ヶ岳→飛騨乗越→槍平小屋→新穂高温泉 の1泊2日。
条件は単独、強風、雨、登攀道具無し。
■難易度
ある書籍では奥穂~西穂の縦走ルートと同じ【登攀1級上】と同じ扱いであるが、雨が降っていた事もあり、北鎌尾根は数段上と感じた。比べたらいけないくらい上。
雨が降っていなかったとしても上。
ネット上では難しくないような書き方をしている記事も見かけるが、安易に信じないようにした方が良いです。
そういう人達は実力が伴ってる人なんでしょうが、遭難者増加の助長をしてるかも知れません。
安易に行けば事故を起こす可能性が非常に高い場所です。
個人的には「是非行ってみて!」なんて絶対言える様な場所ではありません。
奥穂~西穂縦走では「体力があれば行ける」と書いたが、北鎌尾根は体力だけじゃ行けない。
(過去、ジャンダルムの記録へ)
体力は絶対。あとクライミングの技術、そしてパワーも備えていないと厳しいという実感。
普段からトレーニングしている人しか行かない方が賢明。
ここに来る様な人であれば当然備わってると思うが、地図を読む力と岩歩きの経験は必須。
単独ではなおさら。
単独とパーティーでは安心感が全然違うと思われる。確保もしてもらえる。
是非パーティーで行く事を推奨。
自分自身に関しても悪天候に行くんであればもっと実力を付けないとダメ。
今回は運が良かった。
■天気
当然晴れの日を目指して行くべき。
今回、行きたくて雨の中北鎌尾根に行った訳じゃない。
日曜日時点での天気予報が外れ、それを信じた自分が悪いだけ。
予想天気図からピーカンとはならないなぁ・・・というくらいしか考えられなかった。
今回は台風が直前で通過しただけあって天上沢、北鎌沢の水量が事前情報と全然違った。
北鎌沢の登りも厳しくなるし、当然北鎌尾根上はさらに危険度が増す。
これに尾根上では強風がプラスされるので、夏山なのに予想外の寒さに今回はまいった。
尾根に出てしまえば5時間ほどは逃げ道なし。
今回はまさにこれで、1日目に尾根上に出てしまったので、翌日は『行くも地獄、帰るも地獄』という状態。
まぁ尾根上に行くと決めた時点で、先に進む事を決心してはいたんだけども。
水量の増した北鎌沢を下る危険性と、水俣乗越へ登り返すザレザレのルートを思い返すだけで、今回はほぼ迷わず 北鎌尾根に進む事を選択した次第。決して撤退を考えていなかった訳ではない。どちらも地獄だっただけ。
天気が悪ければ北鎌沢出会までで、早めの判断を。
(出来れば水俣乗越までで。荒天時に天上沢の遡上は沢が多くて迷うかも)
■日程&ルート
北鎌尾根へ行くルートは主に3つ
1、今回の、上高地(もしくは新穂高側)から水俣乗越を天上沢へ下るルート
2、大天井ヒュッテから貧乏沢を下り北鎌沢出会を目指すルート
3、高瀬ダムから入り水俣川を遡上するクラシックルート
今回のルートに関しては、2500mほどまで水俣乗越へ登り、1800mほどの北鎌沢出会までの下り。
さらに2500mほどの北鎌のコルまで登り返すという事を1日でこなしたが、体力的に結構きつい。
出来れば北鎌沢出会で幕営すべきかもしれない。そうすると2泊3日の行程になるが、北鎌尾根なのでそれくらいの余裕は必要なのかもしれない。急いでも危険が増すだけ。尾根上を歩いてる人にも迷惑が掛かるだろうし。
安全に北鎌尾根を踏破するために荷物を軽量化したいのであれば、大天井ヒュッテの小屋泊まりとし、テン泊装備無しとなる貧乏沢経由のルートが良いかもしれない。うん、これが一番安全性高いかも。
ただ時間は掛かるかもしれないが、高度を少しづつ上げていける天上沢を遡上していき、行こうと思えばP1から取 り付けるクラシックルートが実は一番楽しめるコースなのかも知れない。
■装備
ヘルメットは必須。
今回はハーネス・ザイル等の登攀道具については単独なので持ち込まなかった。
どちらかというと、日数制限もあり荷物を軽くしたかったというのが本音。
事前情報でも登攀道具は無しでも可、とあったためだが、パーティー組むなら絶対あった方が良い。
そして荷物はなるべく軽くし、小さくパッキングする。
体力の消耗も激しいルートなので、荷物でバランス崩して滑落は十分にありえる。
靴については個人差もあるが、夏季に限ればアプローチシューズ的なものが良い。
テン泊装備で行くのであれば、テントの軽量化をはかりツェルトで済ませる事も良いかもしれない。
ツェルト、持ってないので尾根上の強風に耐えられるかどうかは不明ですが・・・
あとGPSがあれば心強い。今回は頼みのiPhone GPSが雨で死んでしまってピンチに。
高いけどガーミンとか買えればいいんだけどね、無理だね。。。
iPhoneの雨&結露対策。気を付けてはいたんだけど必要と分かった。。。
■事前情報
この時代、情報はいくらでも手に入る。
ただ今回に関してはあまり詰め込むような事はしなかった。
あまりにも情報を入れて北鎌尾根を踏破してもなぁ・・・せっかくだから自分の実力で行きたいよなぁ・・・なんていう自己満 足を満たしたかったからだが、だから道迷いも結構あった。特に北鎌沢右俣遡上で。
あと北鎌沢出会では、ここで本当にいいのか?という不安が強かった。
結果として自信には繋がったがお勧めできない。素直にポイントとなる事前情報を頂きましょう。
ただし北鎌尾根に関する情報は案内看板も何も無いので、書いてる人によって違うこともありました。
その辺は気を付けないといけないところです。
■保険と登山届
山岳保険には必ず入りましょう。
上高地での登山届はもうすぐ義務化されるようです。
実は私、山岳保険に先月はいったばかりです・・・
■個人的な忘備録
iPhoneの雨対策、というか結露の対策が何か必要。
高度が大きく変化(温度変化)が激しい場所ではケースに入れない方が逆に良いかもしれない。
トレッキングポールの収納場所を考える必要がある。
両手を使いたい時、ザックを降ろさなくても、すぐにポールを仮にしまえる方法。
安全面に大きく貢献するはず。
今回カメラは軽量化の点から一眼は止め、昔のデジカメ Canon S90 を持参した。
結果、山行の記録は出来たが、一眼に慣れてしまった眼にこの写りはストレス大。
今後のバリエーションルートの事も考えると、写りの良いコンパクトなカメラが欲しい。。。
今回初めて導入した装備にハイドレーションがあるが、とっても使える。
北鎌尾根などの休憩ポイントもロクにないような場所では、その貢献度は大きい。
ツェルトはもしもの為にも購入しておいた方がいい装備。
今回のような場所ではテント代わりにツェルト装備にしたら大幅な軽量化が可能。
お金に余裕があればなあ。。。
登山靴は山行スタイルに合わせて変化させた方がいい。
重登山靴でバリエーションルートはやや厳しいかもしれない。
■北鎌尾根を目指した目的
北鎌尾根を目指した理由は有名なバリエーションルートであったから。
有名な場所は他にもあるけど、単独で行けるここはやはり魅力的で。
自分は基本ソロなんで。
最近、どの山を歩いていても多少の物足りなさがあって、ただ歩いてる感が否めなく。
・・・これは完全に個人の考え方ですが。
難しいといわれる場所の経験は奥穂~西穂間ですが、思い返すとあれは楽しかった。
岩稜登りが特に楽しかった。剣、早月尾根の岩稜も前穂の登りも楽しかった。
そんな事を考えてると、一般登山道最難関といわれている奥穂~西穂間以上のルート?
もうバリエーションの世界だなぁ、となりました。
自分自身に対する挑戦でもあります。自分はまだ頑張れる!
そしてもう一つの理由。
子供達が大きくなって親になって、自分の息子達に「うちの親父は昔一人でこんな所に行ったらしい、ほんまバカやろ?いくみんもよー許すよなぁ。」と、笑って昔話をしてもらえる様な親父になりたい。
子供達が親父を自慢できるような事を何か残したい、といつも思ってる。
でも死んだら意味ない。そこは気を付けないと。
これからまだまだ頑張ります。
北鎌尾根へのルート
1日目はこちら
2日目はこちら
個人的な感覚になるが、北鎌尾根の難易度は高い。
今回のルートは 上高地→槍沢→大曲→水俣乗越→北鎌沢出会→北鎌沢右俣→北鎌のコル→槍ヶ岳→飛騨乗越→槍平小屋→新穂高温泉 の1泊2日。
条件は単独、強風、雨、登攀道具無し。
■難易度
ある書籍では奥穂~西穂の縦走ルートと同じ【登攀1級上】と同じ扱いであるが、雨が降っていた事もあり、北鎌尾根は数段上と感じた。比べたらいけないくらい上。
雨が降っていなかったとしても上。
ネット上では難しくないような書き方をしている記事も見かけるが、安易に信じないようにした方が良いです。
そういう人達は実力が伴ってる人なんでしょうが、遭難者増加の助長をしてるかも知れません。
安易に行けば事故を起こす可能性が非常に高い場所です。
個人的には「是非行ってみて!」なんて絶対言える様な場所ではありません。
奥穂~西穂縦走では「体力があれば行ける」と書いたが、北鎌尾根は体力だけじゃ行けない。
(過去、ジャンダルムの記録へ)
体力は絶対。あとクライミングの技術、そしてパワーも備えていないと厳しいという実感。
普段からトレーニングしている人しか行かない方が賢明。
ここに来る様な人であれば当然備わってると思うが、地図を読む力と岩歩きの経験は必須。
単独ではなおさら。
単独とパーティーでは安心感が全然違うと思われる。確保もしてもらえる。
是非パーティーで行く事を推奨。
自分自身に関しても悪天候に行くんであればもっと実力を付けないとダメ。
今回は運が良かった。
■天気
当然晴れの日を目指して行くべき。
今回、行きたくて雨の中北鎌尾根に行った訳じゃない。
日曜日時点での天気予報が外れ、それを信じた自分が悪いだけ。
予想天気図からピーカンとはならないなぁ・・・というくらいしか考えられなかった。
今回は台風が直前で通過しただけあって天上沢、北鎌沢の水量が事前情報と全然違った。
北鎌沢の登りも厳しくなるし、当然北鎌尾根上はさらに危険度が増す。
これに尾根上では強風がプラスされるので、夏山なのに予想外の寒さに今回はまいった。
尾根に出てしまえば5時間ほどは逃げ道なし。
今回はまさにこれで、1日目に尾根上に出てしまったので、翌日は『行くも地獄、帰るも地獄』という状態。
まぁ尾根上に行くと決めた時点で、先に進む事を決心してはいたんだけども。
水量の増した北鎌沢を下る危険性と、水俣乗越へ登り返すザレザレのルートを思い返すだけで、今回はほぼ迷わず 北鎌尾根に進む事を選択した次第。決して撤退を考えていなかった訳ではない。どちらも地獄だっただけ。
天気が悪ければ北鎌沢出会までで、早めの判断を。
(出来れば水俣乗越までで。荒天時に天上沢の遡上は沢が多くて迷うかも)
■日程&ルート
北鎌尾根へ行くルートは主に3つ
1、今回の、上高地(もしくは新穂高側)から水俣乗越を天上沢へ下るルート
2、大天井ヒュッテから貧乏沢を下り北鎌沢出会を目指すルート
3、高瀬ダムから入り水俣川を遡上するクラシックルート
今回のルートに関しては、2500mほどまで水俣乗越へ登り、1800mほどの北鎌沢出会までの下り。
さらに2500mほどの北鎌のコルまで登り返すという事を1日でこなしたが、体力的に結構きつい。
出来れば北鎌沢出会で幕営すべきかもしれない。そうすると2泊3日の行程になるが、北鎌尾根なのでそれくらいの余裕は必要なのかもしれない。急いでも危険が増すだけ。尾根上を歩いてる人にも迷惑が掛かるだろうし。
安全に北鎌尾根を踏破するために荷物を軽量化したいのであれば、大天井ヒュッテの小屋泊まりとし、テン泊装備無しとなる貧乏沢経由のルートが良いかもしれない。うん、これが一番安全性高いかも。
ただ時間は掛かるかもしれないが、高度を少しづつ上げていける天上沢を遡上していき、行こうと思えばP1から取 り付けるクラシックルートが実は一番楽しめるコースなのかも知れない。
■装備
ヘルメットは必須。
今回はハーネス・ザイル等の登攀道具については単独なので持ち込まなかった。
どちらかというと、日数制限もあり荷物を軽くしたかったというのが本音。
事前情報でも登攀道具は無しでも可、とあったためだが、パーティー組むなら絶対あった方が良い。
そして荷物はなるべく軽くし、小さくパッキングする。
体力の消耗も激しいルートなので、荷物でバランス崩して滑落は十分にありえる。
靴については個人差もあるが、夏季に限ればアプローチシューズ的なものが良い。
テン泊装備で行くのであれば、テントの軽量化をはかりツェルトで済ませる事も良いかもしれない。
ツェルト、持ってないので尾根上の強風に耐えられるかどうかは不明ですが・・・
あとGPSがあれば心強い。今回は頼みのiPhone GPSが雨で死んでしまってピンチに。
高いけどガーミンとか買えればいいんだけどね、無理だね。。。
iPhoneの雨&結露対策。気を付けてはいたんだけど必要と分かった。。。
■事前情報
この時代、情報はいくらでも手に入る。
ただ今回に関してはあまり詰め込むような事はしなかった。
あまりにも情報を入れて北鎌尾根を踏破してもなぁ・・・せっかくだから自分の実力で行きたいよなぁ・・・なんていう自己満 足を満たしたかったからだが、だから道迷いも結構あった。特に北鎌沢右俣遡上で。
あと北鎌沢出会では、ここで本当にいいのか?という不安が強かった。
結果として自信には繋がったがお勧めできない。素直にポイントとなる事前情報を頂きましょう。
ただし北鎌尾根に関する情報は案内看板も何も無いので、書いてる人によって違うこともありました。
その辺は気を付けないといけないところです。
■保険と登山届
山岳保険には必ず入りましょう。
上高地での登山届はもうすぐ義務化されるようです。
実は私、山岳保険に先月はいったばかりです・・・
■個人的な忘備録
iPhoneの雨対策、というか結露の対策が何か必要。
高度が大きく変化(温度変化)が激しい場所ではケースに入れない方が逆に良いかもしれない。
トレッキングポールの収納場所を考える必要がある。
両手を使いたい時、ザックを降ろさなくても、すぐにポールを仮にしまえる方法。
安全面に大きく貢献するはず。
今回カメラは軽量化の点から一眼は止め、昔のデジカメ Canon S90 を持参した。
結果、山行の記録は出来たが、一眼に慣れてしまった眼にこの写りはストレス大。
今後のバリエーションルートの事も考えると、写りの良いコンパクトなカメラが欲しい。。。
今回初めて導入した装備にハイドレーションがあるが、とっても使える。
北鎌尾根などの休憩ポイントもロクにないような場所では、その貢献度は大きい。
ツェルトはもしもの為にも購入しておいた方がいい装備。
今回のような場所ではテント代わりにツェルト装備にしたら大幅な軽量化が可能。
お金に余裕があればなあ。。。
登山靴は山行スタイルに合わせて変化させた方がいい。
重登山靴でバリエーションルートはやや厳しいかもしれない。
■北鎌尾根を目指した目的
北鎌尾根を目指した理由は有名なバリエーションルートであったから。
有名な場所は他にもあるけど、単独で行けるここはやはり魅力的で。
自分は基本ソロなんで。
最近、どの山を歩いていても多少の物足りなさがあって、ただ歩いてる感が否めなく。
・・・これは完全に個人の考え方ですが。
難しいといわれる場所の経験は奥穂~西穂間ですが、思い返すとあれは楽しかった。
岩稜登りが特に楽しかった。剣、早月尾根の岩稜も前穂の登りも楽しかった。
そんな事を考えてると、一般登山道最難関といわれている奥穂~西穂間以上のルート?
もうバリエーションの世界だなぁ、となりました。
自分自身に対する挑戦でもあります。自分はまだ頑張れる!
そしてもう一つの理由。
子供達が大きくなって親になって、自分の息子達に「うちの親父は昔一人でこんな所に行ったらしい、ほんまバカやろ?いくみんもよー許すよなぁ。」と、笑って昔話をしてもらえる様な親父になりたい。
子供達が親父を自慢できるような事を何か残したい、といつも思ってる。
でも死んだら意味ない。そこは気を付けないと。
これからまだまだ頑張ります。
2014年08月16日
北鎌尾根 単独 暴風雨 2日目
1日目はこちら
北鎌尾根へのルート
■8月12日(火)
強風がテントをたたき、とても熟睡は出来ず、やや湿った状態のダウンジャケットでジメッとした寝起き。
うつらうつらとしながらも、夜中に何度もテントの空気口から外を覗くが真っ白な霧の中。
雨は幸い降ってないようなので、今に霧も晴れるだろう、いや、晴れてもらわねば困る。
今日はいよいよ本格的な北鎌の核心部に突入するんだから。。。
雨の中の北鎌は避けたい。
昨日の沢登りでも何度もすべり、とにかく足場とホールドする手元が不安定で怖い。
これまで履き慣れてきたゴローのダックライトからザンバラン ヴィオーズ・プラス GTに替えた関係もあり、思った以上にフリクションが 効かない。
テント泊装備なので重登山靴のヴィオーズ・プラス GTにしたが、岩稜歩きでは圧倒的に軽登山靴のダックライトの方が信頼で きる。いや、その時はアプローチシューズやクライミングシューズが欲しいと思いながら歩いてた。
ダックライトを履いてくれば良かったな・・・と思うものの、台風直後のあの北鎌沢の水量ではダックライトが耐えら れたかどうかは怪しかった。結局最後まで足元の濡れは皆無で、その点は重登山靴の信頼度は高い。
05:10 P8ピーク出発
強風にあおられながらも何とかテントを撤収、朝飯代わりのチョコバーを食し、P8の先にある天狗の腰掛と独標に 向かってクライミング開始。
当然ながらこの先には水場がないので、残り少ない貴重な水を朝食でガブガブ飲む訳にはいかなかった。
出発した途端に・・・あれ?雨ですか・・・?
・・・くっそー!
と思うものの、自然には逆らえないので再びザックを降ろしレインウェアを着込む。
さぁ、再出発!と歩いた途端に・・・え・・・あれ?雨止みましたか???
普段ならこのまましばらく歩くものの、ここは北鎌。
出来るだけ動きやすい服装にしたい。またザックを降ろしレインウェアを仕舞う。
歩く・・・数分後に本降り・・・
・・・くそー!!!
結局そのままこの日はレインウェアを着続ける事になる。
たった数分のタイムロスが惜しい、と言うか面倒くさい。。。
天狗の腰掛を抜け、独標の下、千丈沢側にあるトラバースラインに入る。

そのまま横移動するのではなく、一旦稜線側に出てからトラバース開始。
さすがに難路。気を抜けば死ねる箇所の連続。慎重に進んでいく。

トラバースラインの途中で、独標への稜線に向け直登開始。
独標下のチムニーと呼ばれるポイントも抜けたが、事前情報では難しくないとあった。
結果して行けたものの、決して容易な場所ではないというのが実感。
雨でとにかくホールドする手と重登山靴が滑る。
背が低くパワーのない女性などには難しい場所だろうなぁ、など思いながら通過した。
事前に調べていた通り、北鎌尾根は踏み跡が無数に付いており、何も考えずに踏み跡に沿って歩くと知らない間に 歩行困難な場所に迷い込む。コースなんてここには無い。自分で見て考えて進む。
迷ったら稜線通しに、とも聞くが、何度も懸垂下降ポイントにたどり着いて難儀した。
単独行なので今回はハーネス・ザイルの類は持ち込んでなく、懸垂下降ポイントを何度か慎重に下った。
稜線は当然ながら風がきつく、落ちたら100mは滑落という場所が多く出現するので、ケースバイケースでトラバー スラインを選択することも必要なことだろう。
P14くらいまで進んだ頃だろうか?
なんせ辺りはガスガスで暴風雨。
視界は10mほどが常であり、先がぜんぜん見えない。
当然槍ヶ岳なんてまだ一度も見ていない。見れる気配もない。
時折ガスが切れる合間に硫黄尾根などの場所を確認し、方角の感覚を修正していく。
トラバースラインの踏み跡に頼って下れば、ガスで稜線が見えなくなってそのまま変な場所に下って行きそうで不 安になる。戻れる時に稜線に戻ろうと決めて歩みを進めた。
稜線に向かう途中、何てことはないけど嫌な岩に出くわした。
3mほどの大きさで、稜線に向かい30度ほどの傾斜で5cmほど足の置き場になりそうなエッジが続いてる岩。
岩の角度的に3点支持ができず、2足歩行になるシチュエーション。
これまでの道のりで散々滑って怖い思いをしてきたので、嫌だなぁ・・・と思いながら慎重にその5cmのエッジに左足 を乗せ、右足を乗せた瞬間、落下。
一瞬の出来事で、足が滑ったのか、支えようとした左手が滑ったのかは分からないが、気付いた時には右目前に岩 。
手で支える間もない一瞬の出来事。
ザックを含めた全体重が右側頭部から岩に突っ込んだ。
ヘルメットを通してもクラッとする衝撃だったが、なんとか気は失わないで済み1mほど下の岩に立てたものの、そ の下は50mほど千丈沢側に切れ落ちてる場所で、今回の山行で一番ヒヤッとした場面。
助かったのは間違いなくヘルメットのおかげで、落石から身を護るために買ったヘルメットだけどこんな形で役立 ってくれた。
ヘルメットをしてなければ間違いなく気を失うほどの衝撃で、そのまま50m以上落ちて死んで、単独だし、天気は悪 いし、しばらく見つからなかっただろうな・・・と思う。
ヘルメットに感謝。
大事に使うし、これから危ない所では必ずしよう。
そんな出来事に心も折れかけた頃、あら?
・・・もしかして槍ですかあれは???
ガスの切れ間から何となく見えてきた槍らしき影。
少し元気でた!

(両日とも天気が悪くて写真はほとんど撮ってない)
08:50 北鎌平
これまで稜線通しを基本としてきたこともあり暴風雨に晒されて体も冷え切り、それでも目標地点がぜんぜん見え なく心が折れそうになったが、槍が見えたことでようやく活力が生まれる。
さぁもうひとふん張りでここを抜けられるぞ・・・
槍の直下に立つと、デカイ。
そしてこれまでとは見上げる角度がぜんぜん違う。
真上を向かないとルートが確認できないが、上を向くとヘルメットがザックにあたってズレ、視界がなくなる。
それくらい見上げないといけないほど槍は垂直の岩壁。
ここ、今の自分に登れるんかいな?
相変わらず暴風雨は止まず、滑る怖さに加えてこの辺りでさらに悪い出来事が手の冷え。
4時間近く雨風に晒された指が冷たくて痺れだしていて、うまく動かせない。
「うわ~やばいわ~」と独り言で声に出していった言葉も、寒さで口が動かずうまく喋れない事に気付く。
そんな状況の自分が、そんな岩壁見あげてる姿にニガ笑い。
たぶん雨風がなければ難易度はぜんぜん違うんだろう。
フリクションが効けば、指の感覚がちゃんとあれば行けるんだろう。
でも今の自分はそれに自信が持てない。
待ってても寒くなる一方で、身を隠す場所もない。
指の感覚が回復する可能性はない。
これ以上悪くなる前に早く進もう、と意を決する。
この時点では、ここまでほぼずっと千丈沢側(北西)からの風が吹き続き、雲の厚さからも天気が回復する期待はなく、たぶん台風11号(この時点で温帯低気圧)の進みが遅く、自分のほぼ真北からやや東側にあって、思ったより前線が離れてないのかもしれないなぁ、待つよりは早めに行程を終わらせた方がいいだろうな、と思っていた。
急ぎながらも慎重に、ルートファインディングを誤らないように進んでいく。
ところどころに残置ハーケンや古いザイル。
みんないろんな所からトライしているみたい。
自分は自分自身の状況からいける道を探し選択し、高度を少しづつ上げていく。
写真ではわからないけど、ほぼ垂直に近いような岩稜が連続する。
とにかく濡れた岩が嫌。

そして最後の核心部はやはりチムニー。
高さ5mほどのチムニー。
これ今の自分には厳しいな・・・
絶対に滑る、まず指に力入らん・・・とネガティブな事ばかり考える。
暴風雨に晒され続けてると良い方向には思考が向かない。冬山でよく経験する感覚。
一旦あきらめ他のルートを探すものの、無し。
その間にもどんどん体温が奪われていく。
迷ってる時間はない。
結局自分にはここが一番可能性のある場所と判断し選択した。
40cmほどの割れ目のチムニーだが、当然ザックを担いだ体が入る訳もなく、右壁の手がかり足がかりを探して重い 体を持ち上げる。
1mほど体を上げる場所はすぐに見つかったが、そこからが見つからない。
あるにはあるが、この程度の引っ掛かりでは今の自分の指に体重をかけられる信頼度はなく、すっぽ抜けそ うだなぁ・・・右手に左手添えて2点で登るか?いや、そんな危険は冒さない方が良いだろう・・・と手探りで他の手がか りを探す。
スマートさに拘らなければ背中のザックを壁に押し付けて登れば良かったかもしれないが、こんな時でもA型の気質 か、それは本能的に嫌がる。自身の意図しない動きになるのが嫌なのかもしれないなぁ。
手がかりを探ってると、右手側にここなら大丈夫かな?というポイントを見つけて、慎重に確認。
多少体のバランスは悪くなるが、それは筋力でカバー出来るはず!
大丈夫か?本当に大丈夫か?
大丈夫!
よし、行くぞ!
チムニーを抜けた後、左手側に白い杭。
どこかで見たことある風景。事前情報で確認した写真の風景。
その杭に近付き天上沢側を見上げると、おお、ここ登れそうだなというポイント。
慎重にそのポイントを登っていき、人ひとりが立てる場所で一休み。
ガスでほとんど先が見えていないので、近付いているのは確かだけど、頂上まで後どれくらいか・・・
そんな事を考えながら上を見上げると、そこに茶色い社が見えた。
槍ヶ岳頂上の社だ。
着いた!
09:20 槍ヶ岳頂上
暴風雨の槍ヶ岳頂上には誰も居らず頂上を独り占め、ってそんな良いものではない。
早くこの場から立ち去りたい。暴風雨をしのげる安全な一般登山道に戻りたい。
暴風雨の中、無理やり2枚だけ写真を撮り、すぐに下山を開始した。
槍ヶ岳頂上での滞在時間は20秒ほどだった。

09:35 槍ヶ岳山荘
しっかり固定された鉄製の梯子やチェーンを下って槍の肩にある槍ヶ岳山荘に到着。
山荘に入ってゆっくり温かいものでも・・・と考えたが、山荘の中には凄い人が見える。
でも前日の大曲からまったく人に遭遇していなかったので、久しぶりにホッとする。
この雨風でみんな行動を控え、小屋の中から外の様子を伺っていた。
とてもびしょびしょの自分が入っていける様なスペースは無い。
結局休憩も取らず槍ヶ岳山荘を後にする。
8月9日から始まっているTJAR2014(トランスシ゛ャハ゜ンアルフ゜スレース)でも素通りして行ったんだろうなぁ。
(そういえば昨日は横尾かどこかのテン場でTJARの緑色のテントを見かけた。スタッフのかな?)
09:40 下山
飛騨側に下りるか?槍平方面に戻るか?
少し考えたが同じルートは通りたくなく、飛騨乗越を経由して新穂高ロープウェイまで下りる事に決めた。
今考えれば西鎌尾根経由で行けばよかったな、とちょっと後悔。
飛騨乗越は昔ジャンダルムに行った時に通った道。
懐かしさはあるが、一度も歩いてない西鎌尾根を少しでも歩ければ良かったな。
11:20 槍平小屋
急いだ割にはコースタイムより遅いくらいで到着。
山と渓谷地図のコースタイムあってる!?(時間とり間違えたんやろか?)
下り道は登山道が雨で沢のように水が流れ、今回は沢登りも沢下りも楽しめた山行だったなぁ、と思いながら下る 。一般登山道の安心感から余裕が生まれたが、それが最後の怪我に繋がる・・・。
普通の登山道、岩と岩をまたいで進んでいた時、右足が滑ってバランスを崩す。
とっさに右手のポールで支えようとするが、そのポールがまた滑る。
右わき腹から岩に落下。
数日たった今でも、何する時でも右わき腹が痛い。ヒビくらい入ったかな???
気を抜き過ぎた罰。普通の登山道で情けない、、、と思いながら下山。
山は最後まで、家に帰るまで、気は抜き過ぎないこと。
13:40 新穂高ロープウェイ
下りの途中からは新穂高ロープウェイバスの出発時間を考えながらの下山。
13:46のバスを逃がすと1時間待たないといけない。
間に合わすように急ぐが、何せ2日間酷使してきた体、全身が痛くスピードあげれない。
残り10分、もう少しなのに歩いてたんじゃ間に合わない。
最後はトレイルランナーのように走り出して間に合わせた。
ほぼ全ての行程がここで終わりだった。
15:00 アカンダナ駐車場着
19:00 自宅着
下山後、いくみんに連絡を取ろうにも雨でiPhoneが死亡しており連絡出来ないまま車中の人に。
公衆電話を探しながら帰ったが、最近は公衆電話ないね。
結局下山後2時間してから公衆電話を見つけたが、ちょっと心配掛けたかな。
今回は雨で色々な事を教わった。
北鎌尾根の事も含め、次回の記事に残す。
北鎌尾根へのルート
■8月12日(火)
強風がテントをたたき、とても熟睡は出来ず、やや湿った状態のダウンジャケットでジメッとした寝起き。
うつらうつらとしながらも、夜中に何度もテントの空気口から外を覗くが真っ白な霧の中。
雨は幸い降ってないようなので、今に霧も晴れるだろう、いや、晴れてもらわねば困る。
今日はいよいよ本格的な北鎌の核心部に突入するんだから。。。
雨の中の北鎌は避けたい。
昨日の沢登りでも何度もすべり、とにかく足場とホールドする手元が不安定で怖い。
これまで履き慣れてきたゴローのダックライトからザンバラン ヴィオーズ・プラス GTに替えた関係もあり、思った以上にフリクションが 効かない。
テント泊装備なので重登山靴のヴィオーズ・プラス GTにしたが、岩稜歩きでは圧倒的に軽登山靴のダックライトの方が信頼で きる。いや、その時はアプローチシューズやクライミングシューズが欲しいと思いながら歩いてた。
ダックライトを履いてくれば良かったな・・・と思うものの、台風直後のあの北鎌沢の水量ではダックライトが耐えら れたかどうかは怪しかった。結局最後まで足元の濡れは皆無で、その点は重登山靴の信頼度は高い。
05:10 P8ピーク出発
強風にあおられながらも何とかテントを撤収、朝飯代わりのチョコバーを食し、P8の先にある天狗の腰掛と独標に 向かってクライミング開始。
当然ながらこの先には水場がないので、残り少ない貴重な水を朝食でガブガブ飲む訳にはいかなかった。
出発した途端に・・・あれ?雨ですか・・・?
・・・くっそー!
と思うものの、自然には逆らえないので再びザックを降ろしレインウェアを着込む。
さぁ、再出発!と歩いた途端に・・・え・・・あれ?雨止みましたか???
普段ならこのまましばらく歩くものの、ここは北鎌。
出来るだけ動きやすい服装にしたい。またザックを降ろしレインウェアを仕舞う。
歩く・・・数分後に本降り・・・
・・・くそー!!!
結局そのままこの日はレインウェアを着続ける事になる。
たった数分のタイムロスが惜しい、と言うか面倒くさい。。。
天狗の腰掛を抜け、独標の下、千丈沢側にあるトラバースラインに入る。
そのまま横移動するのではなく、一旦稜線側に出てからトラバース開始。
さすがに難路。気を抜けば死ねる箇所の連続。慎重に進んでいく。
トラバースラインの途中で、独標への稜線に向け直登開始。
独標下のチムニーと呼ばれるポイントも抜けたが、事前情報では難しくないとあった。
結果して行けたものの、決して容易な場所ではないというのが実感。
雨でとにかくホールドする手と重登山靴が滑る。
背が低くパワーのない女性などには難しい場所だろうなぁ、など思いながら通過した。
事前に調べていた通り、北鎌尾根は踏み跡が無数に付いており、何も考えずに踏み跡に沿って歩くと知らない間に 歩行困難な場所に迷い込む。コースなんてここには無い。自分で見て考えて進む。
迷ったら稜線通しに、とも聞くが、何度も懸垂下降ポイントにたどり着いて難儀した。
単独行なので今回はハーネス・ザイルの類は持ち込んでなく、懸垂下降ポイントを何度か慎重に下った。
稜線は当然ながら風がきつく、落ちたら100mは滑落という場所が多く出現するので、ケースバイケースでトラバー スラインを選択することも必要なことだろう。
P14くらいまで進んだ頃だろうか?
なんせ辺りはガスガスで暴風雨。
視界は10mほどが常であり、先がぜんぜん見えない。
当然槍ヶ岳なんてまだ一度も見ていない。見れる気配もない。
時折ガスが切れる合間に硫黄尾根などの場所を確認し、方角の感覚を修正していく。
トラバースラインの踏み跡に頼って下れば、ガスで稜線が見えなくなってそのまま変な場所に下って行きそうで不 安になる。戻れる時に稜線に戻ろうと決めて歩みを進めた。
稜線に向かう途中、何てことはないけど嫌な岩に出くわした。
3mほどの大きさで、稜線に向かい30度ほどの傾斜で5cmほど足の置き場になりそうなエッジが続いてる岩。
岩の角度的に3点支持ができず、2足歩行になるシチュエーション。
これまでの道のりで散々滑って怖い思いをしてきたので、嫌だなぁ・・・と思いながら慎重にその5cmのエッジに左足 を乗せ、右足を乗せた瞬間、落下。
一瞬の出来事で、足が滑ったのか、支えようとした左手が滑ったのかは分からないが、気付いた時には右目前に岩 。
手で支える間もない一瞬の出来事。
ザックを含めた全体重が右側頭部から岩に突っ込んだ。
ヘルメットを通してもクラッとする衝撃だったが、なんとか気は失わないで済み1mほど下の岩に立てたものの、そ の下は50mほど千丈沢側に切れ落ちてる場所で、今回の山行で一番ヒヤッとした場面。
助かったのは間違いなくヘルメットのおかげで、落石から身を護るために買ったヘルメットだけどこんな形で役立 ってくれた。
ヘルメットをしてなければ間違いなく気を失うほどの衝撃で、そのまま50m以上落ちて死んで、単独だし、天気は悪 いし、しばらく見つからなかっただろうな・・・と思う。
ヘルメットに感謝。
大事に使うし、これから危ない所では必ずしよう。
そんな出来事に心も折れかけた頃、あら?
・・・もしかして槍ですかあれは???
ガスの切れ間から何となく見えてきた槍らしき影。
少し元気でた!
(両日とも天気が悪くて写真はほとんど撮ってない)
08:50 北鎌平
これまで稜線通しを基本としてきたこともあり暴風雨に晒されて体も冷え切り、それでも目標地点がぜんぜん見え なく心が折れそうになったが、槍が見えたことでようやく活力が生まれる。
さぁもうひとふん張りでここを抜けられるぞ・・・
槍の直下に立つと、デカイ。
そしてこれまでとは見上げる角度がぜんぜん違う。
真上を向かないとルートが確認できないが、上を向くとヘルメットがザックにあたってズレ、視界がなくなる。
それくらい見上げないといけないほど槍は垂直の岩壁。
ここ、今の自分に登れるんかいな?
相変わらず暴風雨は止まず、滑る怖さに加えてこの辺りでさらに悪い出来事が手の冷え。
4時間近く雨風に晒された指が冷たくて痺れだしていて、うまく動かせない。
「うわ~やばいわ~」と独り言で声に出していった言葉も、寒さで口が動かずうまく喋れない事に気付く。
そんな状況の自分が、そんな岩壁見あげてる姿にニガ笑い。
たぶん雨風がなければ難易度はぜんぜん違うんだろう。
フリクションが効けば、指の感覚がちゃんとあれば行けるんだろう。
でも今の自分はそれに自信が持てない。
待ってても寒くなる一方で、身を隠す場所もない。
指の感覚が回復する可能性はない。
これ以上悪くなる前に早く進もう、と意を決する。
この時点では、ここまでほぼずっと千丈沢側(北西)からの風が吹き続き、雲の厚さからも天気が回復する期待はなく、たぶん台風11号(この時点で温帯低気圧)の進みが遅く、自分のほぼ真北からやや東側にあって、思ったより前線が離れてないのかもしれないなぁ、待つよりは早めに行程を終わらせた方がいいだろうな、と思っていた。
急ぎながらも慎重に、ルートファインディングを誤らないように進んでいく。
ところどころに残置ハーケンや古いザイル。
みんないろんな所からトライしているみたい。
自分は自分自身の状況からいける道を探し選択し、高度を少しづつ上げていく。
写真ではわからないけど、ほぼ垂直に近いような岩稜が連続する。
とにかく濡れた岩が嫌。
そして最後の核心部はやはりチムニー。
高さ5mほどのチムニー。
これ今の自分には厳しいな・・・
絶対に滑る、まず指に力入らん・・・とネガティブな事ばかり考える。
暴風雨に晒され続けてると良い方向には思考が向かない。冬山でよく経験する感覚。
一旦あきらめ他のルートを探すものの、無し。
その間にもどんどん体温が奪われていく。
迷ってる時間はない。
結局自分にはここが一番可能性のある場所と判断し選択した。
40cmほどの割れ目のチムニーだが、当然ザックを担いだ体が入る訳もなく、右壁の手がかり足がかりを探して重い 体を持ち上げる。
1mほど体を上げる場所はすぐに見つかったが、そこからが見つからない。
あるにはあるが、この程度の引っ掛かりでは今の自分の指に体重をかけられる信頼度はなく、すっぽ抜けそ うだなぁ・・・右手に左手添えて2点で登るか?いや、そんな危険は冒さない方が良いだろう・・・と手探りで他の手がか りを探す。
スマートさに拘らなければ背中のザックを壁に押し付けて登れば良かったかもしれないが、こんな時でもA型の気質 か、それは本能的に嫌がる。自身の意図しない動きになるのが嫌なのかもしれないなぁ。
手がかりを探ってると、右手側にここなら大丈夫かな?というポイントを見つけて、慎重に確認。
多少体のバランスは悪くなるが、それは筋力でカバー出来るはず!
大丈夫か?本当に大丈夫か?
大丈夫!
よし、行くぞ!
チムニーを抜けた後、左手側に白い杭。
どこかで見たことある風景。事前情報で確認した写真の風景。
その杭に近付き天上沢側を見上げると、おお、ここ登れそうだなというポイント。
慎重にそのポイントを登っていき、人ひとりが立てる場所で一休み。
ガスでほとんど先が見えていないので、近付いているのは確かだけど、頂上まで後どれくらいか・・・
そんな事を考えながら上を見上げると、そこに茶色い社が見えた。
槍ヶ岳頂上の社だ。
着いた!
09:20 槍ヶ岳頂上
暴風雨の槍ヶ岳頂上には誰も居らず頂上を独り占め、ってそんな良いものではない。
早くこの場から立ち去りたい。暴風雨をしのげる安全な一般登山道に戻りたい。
暴風雨の中、無理やり2枚だけ写真を撮り、すぐに下山を開始した。
槍ヶ岳頂上での滞在時間は20秒ほどだった。
09:35 槍ヶ岳山荘
しっかり固定された鉄製の梯子やチェーンを下って槍の肩にある槍ヶ岳山荘に到着。
山荘に入ってゆっくり温かいものでも・・・と考えたが、山荘の中には凄い人が見える。
でも前日の大曲からまったく人に遭遇していなかったので、久しぶりにホッとする。
この雨風でみんな行動を控え、小屋の中から外の様子を伺っていた。
とてもびしょびしょの自分が入っていける様なスペースは無い。
結局休憩も取らず槍ヶ岳山荘を後にする。
8月9日から始まっているTJAR2014(トランスシ゛ャハ゜ンアルフ゜スレース)でも素通りして行ったんだろうなぁ。
(そういえば昨日は横尾かどこかのテン場でTJARの緑色のテントを見かけた。スタッフのかな?)
09:40 下山
飛騨側に下りるか?槍平方面に戻るか?
少し考えたが同じルートは通りたくなく、飛騨乗越を経由して新穂高ロープウェイまで下りる事に決めた。
今考えれば西鎌尾根経由で行けばよかったな、とちょっと後悔。
飛騨乗越は昔ジャンダルムに行った時に通った道。
懐かしさはあるが、一度も歩いてない西鎌尾根を少しでも歩ければ良かったな。
11:20 槍平小屋
急いだ割にはコースタイムより遅いくらいで到着。
山と渓谷地図のコースタイムあってる!?(時間とり間違えたんやろか?)
下り道は登山道が雨で沢のように水が流れ、今回は沢登りも沢下りも楽しめた山行だったなぁ、と思いながら下る 。一般登山道の安心感から余裕が生まれたが、それが最後の怪我に繋がる・・・。
普通の登山道、岩と岩をまたいで進んでいた時、右足が滑ってバランスを崩す。
とっさに右手のポールで支えようとするが、そのポールがまた滑る。
右わき腹から岩に落下。
数日たった今でも、何する時でも右わき腹が痛い。ヒビくらい入ったかな???
気を抜き過ぎた罰。普通の登山道で情けない、、、と思いながら下山。
山は最後まで、家に帰るまで、気は抜き過ぎないこと。
13:40 新穂高ロープウェイ
下りの途中からは新穂高ロープウェイバスの出発時間を考えながらの下山。
13:46のバスを逃がすと1時間待たないといけない。
間に合わすように急ぐが、何せ2日間酷使してきた体、全身が痛くスピードあげれない。
残り10分、もう少しなのに歩いてたんじゃ間に合わない。
最後はトレイルランナーのように走り出して間に合わせた。
ほぼ全ての行程がここで終わりだった。
15:00 アカンダナ駐車場着
19:00 自宅着
下山後、いくみんに連絡を取ろうにも雨でiPhoneが死亡しており連絡出来ないまま車中の人に。
公衆電話を探しながら帰ったが、最近は公衆電話ないね。
結局下山後2時間してから公衆電話を見つけたが、ちょっと心配掛けたかな。
今回は雨で色々な事を教わった。
北鎌尾根の事も含め、次回の記事に残す。
2014年08月13日
北鎌尾根 単独 暴風雨 1日目
暴風雨の中、北鎌尾根を単独。
気を抜けば死ねる場所だらけの北鎌尾根。
そして暴風雨でアクシデントが重なり危険な山行となりました。
北鎌尾根へのルート
■8月10日(日)
台風11号が通り過ぎた18時に自宅を出発し、アカンダナ駐車場に向かう。
でも岐阜県に入り豪雨にさらされる。あれなんかおかしいなぁ。
目的地は北アルプス、北鎌尾根からの槍ヶ岳。
一般登山道ではないバリエーションルート。
22時過ぎにアカンダナ駐車場付近に到着するが、03時にしか駐車場は開かず、平湯温泉の駐車場で仮眠。
半袖半ズボンで寝たら寒くて何度も起きるが、着込む気力なし。
何より軽トラのボディーを打つ雨音がやる気をそぐ。
■8月11日(月)
台風一過はどこへやら。
アカンダナ駐車場に04時に入場し、始発の04:50の上高地行バスを待っている時点で諦めてレインウェアを着込む。
雨は降り続く。
05:30 上高地出発
今回の山行の目的は北鎌尾根からの槍登頂。
槍ヶ岳が目的ではなく、あくまで目的は北鎌尾根。
しかも1泊2日の強行軍なので初日はとにかく距離を伸ばしたい。

08:40 槍沢ロッヂ
雨は降り続くどころか、ますます強雨に。
休憩もそこそこに先を急ぐ。
他の登山者も「台風一過だと思ったのになぁー」と話してる。
09:30 槍沢大曲
槍ヶ岳が目的ならこのまま真っ直ぐに殺生ヒュッテに向かうが、今回は大曲から水俣乗越を目指す。

10:30 水俣乗越
標高2500mほど。上高地から1000mほど高度を上げる。
ここまでが一般登山道。
ここからは登山道ではないバリエーションの世界。
全ては自己責任。

水俣乗越から登山道を外れ、北に進路をとり下る。
下り道はザレザレで、撤退の時にここを登り返すはキツイな・・・と思いながら下る。
途中には遭難者の物なのか、ずいぶん以前と思われる登山靴が片足だけ落ちてたり、ちょっと気味が悪い。
そんなところに雨が降る中、足を踏み入れていく自分も自分。
今回の山行は自分なりの挑戦。
途中雪渓も下り、標高をどんどん下げて1800m地点まで。
大きなアクシデントが1つ。
雨のせいか天候のせいかiPhoneのGPSが調子悪く感度が全然上がらない。(結局、我がiPhoneこの山行で息絶える・・・)
なにせ単独行が主の自分は、このGPSに助けてもらってる部分が多く、これがないと大幅な戦力ダウン。
バリエーションのルートに入っているので自分がどこを歩いてるのか、GPSが無いと方角と地図だけで判断しないといけなくなる。
なにせ登山道を歩いてるわけじゃないのだから。
上高地からずっと調子の悪かったiPhone GPSを頼むぞ!と祈るような気持ちで何度も見たが、回復する兆しなし。
それどころか表示される現在地がフラフラと彷徨っており、不安をさらにあおる。
もうこのGPSには頼れない。
こんな事もあろうかと事前に情報収集し、プリントアウトしていた紙を取り出す。
悲惨。
インクが汗と雨でにじんで何が何だかさっぱり分からない・・・

ぴーんち!
いや、冗談じゃなくピンチ。
大体、ここまで雨になるなんて思ってなかったもんなぁ…
もうこれで頼れるのは山岳地図だけ。
あとは自分の記憶にある知識。
12:00 北鎌沢出会
高度を1800mほどまで下げた場所に、今下ってきた主流の天上沢と北鎌沢が出会う北鎌沢出会がある。
といっても通常の登山道のような標識はないので、たぶんここがそうだな、と思うだけ。
予定してるルートはここから北鎌沢に進路を変更する。
山岳地図の等高線と、霧雨でかすんではいるが時折見える地形から判断した。
何せバリエーションのルートで、平日で、さらに天気が悪い条件なので、ひとっこひとり遭わない。
いれば聞けるのに、誰もいない。
台風の雨で増水してると思われる沢の轟音が聞こえるだけ。
とにかく不安。
ここで良いのか?
本当にここなのか?
大丈夫か自分!!
通常ならここの北鎌沢出会で幕営するんじゃなかろうか。
テント泊の装備を担いで上高地から歩いてきて12時。
ここが北鎌沢出会かどうかも怪しく、ここから先に進めば標高はまた2500mほどまで上げないといけない。
当然歩いたこともない北鎌沢。道迷いがひじょうに多いと言われている北鎌沢。
もう勝負勝負!
自分を信じろ!
北鎌沢出会を後にし、西に進路を変更、北鎌沢を遡上する。
1500mから2500mまで高度あげてから1800mまで下り、また更に2500mまで登り返すのはキツイ。
しかも事前情報では北鎌沢は右俣と左俣に分かれてるので、主流の左俣ではない右俣に進路を変更し、遡上していくとあった。
涸れている右に右に・・・

って・・・台風の影響か涸れてるどころかジャンジャン水が流れ落ち、どこが支流なのか本流なのか全然分からない。
明らかに自分が集めた事前情報とは違う水量。頭の上からも沢水が降ってきて、完全に沢登り状態。
本当にここなのか・・・?
2度ほど沢の選択を間違え、ブッシュをトラバース。
登山道ではないので、間違えたかどうかは分からないが、帰ってきた今思うと間違えたと思った勘は間違ってなかったんだろう。
でもトラバースは怖い。これまでの山の経験からも相当気を付けないといけない。
急がば回れ。ショートカットは厳禁。今まで散々怖い思いをしてきた。
それでも体力と時間の関係もあり、今回は足元が見えないままブッシュに突っ込んでいった。
しばらく進んだところで、直感的にこれ以上はヤバい・・・と思いトラバースを中断、下り返して正規のラインに戻った事があったが、後からそこを見上げたら5mほどキレ落ちていてゾッとした。あと数歩前に進んでいたらさようならだった。
あと、120cmほどの石に右足を置き体重をかけたら、その石ごと沢に落ちた。
石は2m弱下に落ち止まったが、まさかこんな大きな石まで落ちるとは。
随分台風の影響が出ているんだろう、この先慎重に行かないと。と思った出来事。
自分はとっさに右肩を岩にこすりつけ1m程度の落下ですんだが、左薬指と小指をしこたま打ち付け腫れ上がる。激痛に折れたかな?と一瞬思ったが腫れは1日でひいた。
14:50 北鎌のコル
豪雨で松の倒木が行く手を遮り、ジャンジャン流れる北鎌沢右俣との格闘は終わり、ひょっこりと尾根沿いに出た。
約3時間の急登遡上。
写真で見た場所。見覚えがあった。
ホッとした。

この時点で疲労はピーク。
もう動きたくない・・・
そんな気持ちになったが、実は今回の山行を成功させるポイントは初日にあると考えてた。
核心部はもちろん2日目の北鎌尾根歩きになるが、そこをどれだけ体力を温存した状態で登れるか。
どれだけ1日目に進めるかが今回の鍵。
歩くことに決めた。
沢登りで気付かなかったが、その頃には雨も止んで北鎌のコルからは大天井岳が見事に見えた。
数年前にいくみんと一緒に登った山。
その風景に元気付けられながら重いザックを担ぎ直し、さらに重い足を前に進めた。
ここからが正念場。
そんな気持ちで歩いた。

16:30 P8(ピーク8)
疲労困憊。
出来れば独標と呼ばれる基部まで歩みを進めたかったが、ここで本日の行動を止めることにした。
この先は厳しい箇所が幾度も出てくるはずで、この体力では心許ない。もう自分は北鎌尾根にいる。
精神的疲労と、激しいアップダウンを繰り返し11時間歩き続けた体は止まれサインをずいぶん以前から出していた。
目的地には到達しなかったけれど、よく頑張ったと思う。
独標は霧に見え隠れ。

P8のピークで幕営するためにザックから荷物を取り出したときにまたやっちまった事に気付く。
ザックカバーはしていたが、雨と沢登でダウンジャケットとダウンシュラフを濡らすという失態。
いくら夏山とはいえ、強風の3000m近くの尾根上でダウンの濡れは死に近づく。
P8のピークで低木にダウンを引っ掛け、強風により少しでも乾かした。。。
こんなところで・・・鯉のぼりみたいやんけー・・・と少し情けなかった。
P8からの眺め

幕営地

ぎりぎりテントを張れる広さ。というか、ちょっと小さい。
テント幕営完了。でも狭くてペグとかちゃんと効いてない個所も。

テントを設営してからはサクサクッと夕食を食べ、19時前には明日に備えて寝た。
多少晴れてた天候も夕方以降は強風とガスに覆われ、眺望はほぼ無し。
一晩中強風にあおられ、テントごと飛ばされそうな夜。
テントのペグが強風で抜けてる事は分かっていたが、直しに外に出たとたんにテントが飛ぶだろうな、と自ら重しと化した。
誰もいない夜なのに、強風がテントに叩き付ける音がなぜか時おり子供の騒ぎ声に聞こえたりするのを気にしつつ、寝袋に包まったまま念仏のように『今はとにかく体力を回復させること。今はとにかく体力を回復させること。』と思いながら夜を過ごした。
この強風だけど、明日はどうか晴れますように・・・
翌日へ続く・・・
気を抜けば死ねる場所だらけの北鎌尾根。
そして暴風雨でアクシデントが重なり危険な山行となりました。
北鎌尾根へのルート
■8月10日(日)
台風11号が通り過ぎた18時に自宅を出発し、アカンダナ駐車場に向かう。
でも岐阜県に入り豪雨にさらされる。あれなんかおかしいなぁ。
目的地は北アルプス、北鎌尾根からの槍ヶ岳。
一般登山道ではないバリエーションルート。
22時過ぎにアカンダナ駐車場付近に到着するが、03時にしか駐車場は開かず、平湯温泉の駐車場で仮眠。
半袖半ズボンで寝たら寒くて何度も起きるが、着込む気力なし。
何より軽トラのボディーを打つ雨音がやる気をそぐ。
■8月11日(月)
台風一過はどこへやら。
アカンダナ駐車場に04時に入場し、始発の04:50の上高地行バスを待っている時点で諦めてレインウェアを着込む。
雨は降り続く。
05:30 上高地出発
今回の山行の目的は北鎌尾根からの槍登頂。
槍ヶ岳が目的ではなく、あくまで目的は北鎌尾根。
しかも1泊2日の強行軍なので初日はとにかく距離を伸ばしたい。
08:40 槍沢ロッヂ
雨は降り続くどころか、ますます強雨に。
休憩もそこそこに先を急ぐ。
他の登山者も「台風一過だと思ったのになぁー」と話してる。
09:30 槍沢大曲
槍ヶ岳が目的ならこのまま真っ直ぐに殺生ヒュッテに向かうが、今回は大曲から水俣乗越を目指す。
10:30 水俣乗越
標高2500mほど。上高地から1000mほど高度を上げる。
ここまでが一般登山道。
ここからは登山道ではないバリエーションの世界。
全ては自己責任。
水俣乗越から登山道を外れ、北に進路をとり下る。
下り道はザレザレで、撤退の時にここを登り返すはキツイな・・・と思いながら下る。
途中には遭難者の物なのか、ずいぶん以前と思われる登山靴が片足だけ落ちてたり、ちょっと気味が悪い。
そんなところに雨が降る中、足を踏み入れていく自分も自分。
今回の山行は自分なりの挑戦。
途中雪渓も下り、標高をどんどん下げて1800m地点まで。
大きなアクシデントが1つ。
雨のせいか天候のせいかiPhoneのGPSが調子悪く感度が全然上がらない。(結局、我がiPhoneこの山行で息絶える・・・)
なにせ単独行が主の自分は、このGPSに助けてもらってる部分が多く、これがないと大幅な戦力ダウン。
バリエーションのルートに入っているので自分がどこを歩いてるのか、GPSが無いと方角と地図だけで判断しないといけなくなる。
なにせ登山道を歩いてるわけじゃないのだから。
上高地からずっと調子の悪かったiPhone GPSを頼むぞ!と祈るような気持ちで何度も見たが、回復する兆しなし。
それどころか表示される現在地がフラフラと彷徨っており、不安をさらにあおる。
もうこのGPSには頼れない。
こんな事もあろうかと事前に情報収集し、プリントアウトしていた紙を取り出す。
悲惨。
インクが汗と雨でにじんで何が何だかさっぱり分からない・・・
ぴーんち!
いや、冗談じゃなくピンチ。
大体、ここまで雨になるなんて思ってなかったもんなぁ…
もうこれで頼れるのは山岳地図だけ。
あとは自分の記憶にある知識。
12:00 北鎌沢出会
高度を1800mほどまで下げた場所に、今下ってきた主流の天上沢と北鎌沢が出会う北鎌沢出会がある。
といっても通常の登山道のような標識はないので、たぶんここがそうだな、と思うだけ。
予定してるルートはここから北鎌沢に進路を変更する。
山岳地図の等高線と、霧雨でかすんではいるが時折見える地形から判断した。
何せバリエーションのルートで、平日で、さらに天気が悪い条件なので、ひとっこひとり遭わない。
いれば聞けるのに、誰もいない。
台風の雨で増水してると思われる沢の轟音が聞こえるだけ。
とにかく不安。
ここで良いのか?
本当にここなのか?
大丈夫か自分!!
通常ならここの北鎌沢出会で幕営するんじゃなかろうか。
テント泊の装備を担いで上高地から歩いてきて12時。
ここが北鎌沢出会かどうかも怪しく、ここから先に進めば標高はまた2500mほどまで上げないといけない。
当然歩いたこともない北鎌沢。道迷いがひじょうに多いと言われている北鎌沢。
もう勝負勝負!
自分を信じろ!
北鎌沢出会を後にし、西に進路を変更、北鎌沢を遡上する。
1500mから2500mまで高度あげてから1800mまで下り、また更に2500mまで登り返すのはキツイ。
しかも事前情報では北鎌沢は右俣と左俣に分かれてるので、主流の左俣ではない右俣に進路を変更し、遡上していくとあった。
涸れている右に右に・・・
って・・・台風の影響か涸れてるどころかジャンジャン水が流れ落ち、どこが支流なのか本流なのか全然分からない。
明らかに自分が集めた事前情報とは違う水量。頭の上からも沢水が降ってきて、完全に沢登り状態。
本当にここなのか・・・?
2度ほど沢の選択を間違え、ブッシュをトラバース。
登山道ではないので、間違えたかどうかは分からないが、帰ってきた今思うと間違えたと思った勘は間違ってなかったんだろう。
でもトラバースは怖い。これまでの山の経験からも相当気を付けないといけない。
急がば回れ。ショートカットは厳禁。今まで散々怖い思いをしてきた。
それでも体力と時間の関係もあり、今回は足元が見えないままブッシュに突っ込んでいった。
しばらく進んだところで、直感的にこれ以上はヤバい・・・と思いトラバースを中断、下り返して正規のラインに戻った事があったが、後からそこを見上げたら5mほどキレ落ちていてゾッとした。あと数歩前に進んでいたらさようならだった。
あと、120cmほどの石に右足を置き体重をかけたら、その石ごと沢に落ちた。
石は2m弱下に落ち止まったが、まさかこんな大きな石まで落ちるとは。
随分台風の影響が出ているんだろう、この先慎重に行かないと。と思った出来事。
自分はとっさに右肩を岩にこすりつけ1m程度の落下ですんだが、左薬指と小指をしこたま打ち付け腫れ上がる。激痛に折れたかな?と一瞬思ったが腫れは1日でひいた。
14:50 北鎌のコル
豪雨で松の倒木が行く手を遮り、ジャンジャン流れる北鎌沢右俣との格闘は終わり、ひょっこりと尾根沿いに出た。
約3時間の急登遡上。
写真で見た場所。見覚えがあった。
ホッとした。
この時点で疲労はピーク。
もう動きたくない・・・
そんな気持ちになったが、実は今回の山行を成功させるポイントは初日にあると考えてた。
核心部はもちろん2日目の北鎌尾根歩きになるが、そこをどれだけ体力を温存した状態で登れるか。
どれだけ1日目に進めるかが今回の鍵。
歩くことに決めた。
沢登りで気付かなかったが、その頃には雨も止んで北鎌のコルからは大天井岳が見事に見えた。
数年前にいくみんと一緒に登った山。
その風景に元気付けられながら重いザックを担ぎ直し、さらに重い足を前に進めた。
ここからが正念場。
そんな気持ちで歩いた。
16:30 P8(ピーク8)
疲労困憊。
出来れば独標と呼ばれる基部まで歩みを進めたかったが、ここで本日の行動を止めることにした。
この先は厳しい箇所が幾度も出てくるはずで、この体力では心許ない。もう自分は北鎌尾根にいる。
精神的疲労と、激しいアップダウンを繰り返し11時間歩き続けた体は止まれサインをずいぶん以前から出していた。
目的地には到達しなかったけれど、よく頑張ったと思う。
独標は霧に見え隠れ。
P8のピークで幕営するためにザックから荷物を取り出したときにまたやっちまった事に気付く。
ザックカバーはしていたが、雨と沢登でダウンジャケットとダウンシュラフを濡らすという失態。
いくら夏山とはいえ、強風の3000m近くの尾根上でダウンの濡れは死に近づく。
P8のピークで低木にダウンを引っ掛け、強風により少しでも乾かした。。。
こんなところで・・・鯉のぼりみたいやんけー・・・と少し情けなかった。
P8からの眺め
幕営地
ぎりぎりテントを張れる広さ。というか、ちょっと小さい。
テント幕営完了。でも狭くてペグとかちゃんと効いてない個所も。
テントを設営してからはサクサクッと夕食を食べ、19時前には明日に備えて寝た。
多少晴れてた天候も夕方以降は強風とガスに覆われ、眺望はほぼ無し。
一晩中強風にあおられ、テントごと飛ばされそうな夜。
テントのペグが強風で抜けてる事は分かっていたが、直しに外に出たとたんにテントが飛ぶだろうな、と自ら重しと化した。
誰もいない夜なのに、強風がテントに叩き付ける音がなぜか時おり子供の騒ぎ声に聞こえたりするのを気にしつつ、寝袋に包まったまま念仏のように『今はとにかく体力を回復させること。今はとにかく体力を回復させること。』と思いながら夜を過ごした。
この強風だけど、明日はどうか晴れますように・・・
翌日へ続く・・・
2014年08月12日
山の厳しさ
台風11号により週末の予定を変更せざるおえなくなり、急遽無理言って月曜日と火曜日を休暇にしてもらう。
全力で挑んだ山行。
今は満身創痍。
指も手も、足も胸も肩も全部痛い。
稜線上では暴風雨にさらされた。
雨でGPS機能を喪失し、自分なりにまとめた地形図メモも雨で判読不能。
頼れるのは自分の頭と山岳地図、そして経験。
もう一度この場所に行こうとは今は思えないわ。
全力で挑んだ山行。
今は満身創痍。
指も手も、足も胸も肩も全部痛い。
稜線上では暴風雨にさらされた。
雨でGPS機能を喪失し、自分なりにまとめた地形図メモも雨で判読不能。
頼れるのは自分の頭と山岳地図、そして経験。
もう一度この場所に行こうとは今は思えないわ。